あの人と九星 孝獻皇帝 劉協(二)

あの人と九星 コラム

長安遷都の吉凶

初平元年(西暦190年)
(二月)丁亥,遷都長安
三月乙巳,車駕入長安,幸未央宮。(『後漢書』孝獻帝紀)

漢魏洛陽故城 から
漢未央宮前遺跡 まで


(c)Google map

九星と移動方位の確認

姓名  劉協
生年  光和四年(西暦181年)
本命星 一白水星

転居  初平元年(西暦190年)
年盤  一白水星中宮年 
方位  兌(西)三碧木星回座
歳破  子(北)

移動距離 349km(直線距離)




定位対冲

西(兌宮)の定位の七赤とは相剋の三碧が回座。
波乱の予感の西の方角・長安(西安)へ遷都した結果、起きたことは、政変と内乱と旱魃による飢饉でした。

本命星中宮年

運気は高いとはいえ、本命一白の定位である坎宮は必ず暗剣殺となる星回り。
暗剣殺の坎宮に、必ず回座してくるのは六白。象意は「権力者」。

劉協が置かれている状況から、暴臣・董卓の影響を強く受ける歳である暗示とも読み解けます。
さらに坎宮に歳破。



兌宮 三碧回座

一見、劉協にとって吉方位にも見えますが、三碧が相克の関係の七赤の兌宮に回座している状況。

定位対冲は取らない流派もある事ですが、気学はつくづく「冲」を重視する世界だと感じているため、吉方位と断言できないと考えることにします。

とはいえ、先天定位盤では兌宮(西)は一白の定位で、西方位は一白とゆかりの深い方位です。
このことが、一白の劉協にとって吉と出る可能性も感じます。


実際の出来事


太字『後漢書』孝獻帝紀 からの引用です

2年2カ月後
(初平三年)夏四月辛巳,誅董卓,夷三族。
董卓誅殺が成功。

※三碧が兌宮に回座した方位への移動が凶方位だった場合、「若い男が酒色に溺れる」方災の暗示があります。

遷都時に劉協は9歳だったので、酒色に溺れるには幼すぎました。
方災は呂布に発動した、という見方もできます。

「三国演義」で描かれている、董卓誅殺にまつわる「美女貂蝉をめぐる董卓と呂布の諍い」(連環の計)は、あながち架空ではないかもしれない と、遁甲盤は語ります。

董卓と呂布の本命星が三碧または八白であり、長安遷都が両者にとって凶方位であった可能性も浮上します。

2年4か月後
六月戊午,陷長安城,
喜びもつかの間、董卓の元配下の武将がクーデター。
その後も諸将が小競り合いを繰り返し内乱が続いている。

誰もが、劉協つまり帝を支配下に置こうと画策し、天下に覇を唱えたい野心を隠しもしない状況。

4年2カ月後
(興平元年)
九月,桑復生椹,人得以食。
四月の一カ月旱魃、5月から不作で餓死者続出の国難。
兵糧もないため、内乱も一時休戦。
九月に椹(桑の実)がまた実り、食料にできるようになる。

※桑の実の収穫時期は新暦6月頃(旧暦4月頃?)のようです。
「復生」「また実った」と書かれているため、一年に二回実をつけたことになります。
異常気象による現象だった、という解釈になろうかと考えます。

5年1カ月後
(興平二年)
三月丙寅,李傕脅帝幸其營,焚宮室。
兵糧が確保できるようになると、また内乱がはじまる。
劉協は李傕の陣営に拉致され、宮殿は焼かれる。

5年2カ月後
(四月)
丁酉,郭汜攻李傕,矢及御前。是日,李傕移帝幸北塢。
郭汜が李傕の陣を攻め、矢の射程は劉協の前まで及ぶ。
李傕は即日、劉協を北塢(北の砦)へ移す。

5年5か月後
秋七月甲子,車駕東歸
劉協、東(洛陽)への帰路につく。


所感

過酷。
動乱の時代というタイミングもありますが、長安遷都後の過酷な5年5カ月。

ただ、準備して決めた遷都ではなく、董卓の専横で突然の遷都であったにしては、劉協にとっては五大凶方位を全て回避していたことが救いです。

遷都の時、劉協はまだ9歳。
矢に中る恐怖を体験した時は15歳。
中国の戦場の事です、矢は雨のように飛んできたはず。
流れ矢に当たって儚くなっても不思議はないほどの惨憺たる有様。

旱魃と飢饉で民にも過酷。
行幸の方位の吉凶は天下に及ぶ。

遷都5年目、李傕のごときが帝に近づき、連れ回すなどは不敬の極み。
一国の帝が、三軍を率いる器量もない一介の武将の陣営に拉致され、未央宮にさえ住めなくなるなど、漢室の威信も地に落ちる嘆かわしい出来事。


李傕も大事な手札を死守したでしょうが、劉協が怪我もなく命だけは長らえることができたのは運があったうえに、漢室の命運いまだ尽きていなかった、と見るべきかもしれません。


こうなりますと、今度は東へ約400km移動し洛陽に戻ったこの年、興平二年(西暦195年)の遁甲盤も調べてみたくなります。

それは次回で。

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